初心者のディベーターを救う団・公式ホームページ

2.5 反則行為

ディベートの試合においても、サッカーでいうイエローカードやレッドカードに当たる反則行為があります。実際の試合で問題となることはあまりないのですが、反則を犯さないようにチェックしておきましょう。
ただし、ディベートのルールは大会ごとに微妙に異なります。以下では一般的に言われることを説明しますが、大会に出場される際はルールをよく確認し、反則にあたる行為について見ておくようにしてください。

ステージの役割分担に関して

ディベートでは、各ステージで担当者以外がスピーチを行い、またはスピーチの内容についてアドバイスする行為を禁じています。これは、各ステージにおいて担当者以外の発言を禁じることでスピーチが妨げられることを防ぎ、またステージごとに担当者を分けて議論を分担させていることの趣旨を貫徹するための規定です。同様の目的から、観客など外部との連絡も禁止されています。
自分のチームの選手といえども、スピーチの間はチームメイトに頼らず、自分の力で発言しなければならないのです。スピーチの内容についてメモで連絡を取ったり、原稿を取ってもらうなどの行為では反則には至りませんが、口頭でのアドバイスは一般的に禁じられているので、注意してください。

また、当然のことですが、事前に届け出た以外の選手が出場したりすることは、反則に当たります。いうまでもないことですが、念のため。

コラム 〜試合外での介入について〜
上で書いたように、ディベートでは、各ステージで担当者以外の発言を禁じるとともに、スピーチ内容に対するアドバイスを禁じています。その趣旨は、ステージごとの議論分担を守るということにありますが、その前提として、ディベートではあくまで「スピーチする当人」の議論が評価されるのだという原則があります。

ディベートというのは特殊な競技で、サッカーや野球のように選手個人の技能だけでなく、事前の準備が勝敗に大きく影響してきます。端的に言えば、誰かに議論を用意してもらうことで、相手に勝ってしまうことも可能な競技なのです(実際には、人の議論を利用することは意外と難しく、なかなか上手くいかないことが多いのですが)。しかし、このように他人の介入による議論を用いる行為は、先に書いた原則に反するものです。

とすれば、ステージ中に他人からのアドバイスを禁じるルールを類推解釈して、試合前に議論を作ってもらう行為も同様に反則にあたると考えることもできます。もっとも、この場合は往々にして介入する側に介入動機があることが多いので、選手ではなく介入した指導者に対して何らかのペナルティを課すことが相当でしょう(実際にはルールにこうした規定がないので、あくまで立法論としての私見にとどまりますが…)。

選手としてディベートに取り組む皆さんには、人にアドバイスをもらうことには積極的になってほしいと思っています。しかし、人に言われたとおりの議論を繰り返すだけのディベートはしてほしくありません。そのようなことには何の意味もありませんし、そんなディベートは楽しくありません。指導者としてディベートに関わる場合も、過度な介入を行わないように慎むべき義務があるといえるでしょう。


証拠資料について

第4章で詳しく説明しますが、ディベートでは自分たちの主張を裏付けるために、書籍や新聞などの文書を証拠資料として引用することが一般的です。
ここで、虚偽の証拠資料を捏造したり、証拠資料の内容を不当な形で引用する行為が行われる可能性があります。このような行為は、議論を冒涜する行為として許されません。悪質な場合は試合や大会の失格理由にもなりますし、ディベーターとしての責任も問われうる重大な反則です。

また、ディベートでは自分たちの準備時間の間に相手の証拠資料を確認することができます(第7章で触れます)。これは、相手の証拠資料を精査する機会を認めることで反論の権利を保障することを主な目的としています。相手の確認請求に応じずに証拠資料を提示しない行為は、このような権利を奪うものであり、反則行為とされます。ですから、自分たちがもちいる証拠資料は請求された場合きちんと提示されるようにしておかなければなりません。

証拠資料の扱い方や反則となる引用方法の基準については、いろいろと難しい問題があります。これについては、当サイトの「ディベートの争点」で別途考察しているので、ディベートに慣れてきた方はそちらも参照してみてください。ディベート初心者の皆さんは、「他人の意見を借りるときはその意見を尊重しなければならない」という当たり前のことを意識できていれば十分です。

マナーに反する行動について

1.3節で「ディベーターとして守らなければならないこと」として議論のマナーを説明しました。ここで説明したマナーに反する行為も、反則行為とされます。特に、相手に対する暴言などは重大な反則行為とされています。これは、議論を行うものとして当然守らなければならないことであり、意図的にそれを破ることはディベーターとして許されません。

基本的に、ディベートにおける反則行為は、議論を扱う競技者として行うべきではないものに限定されています。その意味で、常識的にディベートに取り組んでいれば起こるはずのない行為であるということができます。そのため、実際に反則行為が問題となることは少ないのですが、時にマナー違反に当たるような言動が見られてしまうことも残念ながらあります。そのようなことのないように、常に注意しておく必要があります。


ここまでで、ディベートの試合についての説明は一通り終わりました。これで、試合を見るに際して(議論の意味を理解することは除いて)困難はないはずです。次の節では、ディベートを行う上でも見る上でも重要な「試合の記録方法」を説明します。

2.6 試合の記録方法

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