2.6 議論の記録方法
ディベートでは、たくさんの議論が提出され、それを元に勝敗が決まります。試合で出された議論の内容をきちんと記録しておかなければ、試合についていくことができません。ここでは、スピーチを記録する方法について説明します。
フローシートって何?
ディベートを行うためには、試合中に出てくる議論をきちんと記録する必要があります。これは、選手としても当然のこと、試合を見るにあたっても必要なことです。そこで、ディベートの選手やジャッジ、観客はみんなフローシートというものに議論を記録します。フローシートといっても、特別な用紙を用いるのではなく、単に「ディベートの試合を記録するための紙」という意味だけなのですが、このフローシートを上手く取ることが、ディベートに上達する第一のポイントとなります。
そこで、以下では、フローシートの取り方を説明した上で、うまくフローシートを取るコツをいくつか紹介します。
フローシートの取り方
ディベートでの議論を記録する際には、その要点だけを記録していきます。また、試合の流れを追えるように、関連する議論同士をきちんと把握できるように記録する必要があります。
そのために、フローシートでは以下のような基本的なルールを守って記録していきます。
・議論の中身のうち重要な言葉や見出し(ラベル)は必ず書き取る
・スピーチのステージごとに違う場所に記録する
・反論など、前の議論と関係する議論については、その議論の右に記録していく
左のように、フローシートは右に向かって議論が伸びていくように書きます。1つのステージで出された議論は、下に書き並べていきます。そして、次のステージはその横のスペースに書いていきます。図にあるように、書く場所を区切っておくと書きやすいかもしれません。紙を縦に8つ折り(1回立論だと6つ折りでも可)にすると、書くスペースができます。
反論が出された場合は、反論の対象となった元の議論がどれであるか分かるように、その横に書き、矢印などでつなぎます。前の議論を説明されたときなども、同様にその右に書き加えていくようにしてください。
分かりやすいフローシートを書くためには、どのチームの発言かどうか分かりやすいようにペンの色を変えて記録します(図の場合、肯定側のスピーチを青、否定側のスピーチを赤で書いています)。また、議論ごとに書く場所を変える(メリットとデメリットは別の場所に書く)と、議論が錯綜しないので分かりやすくなります。図の場合は上側と下側で分けていますが、複数枚の紙を使い、議論ごとに別々の紙に記録するのが分かりやすくておすすめです。
右の図は、上のフローシートの図を拡大したものです。議論の一語一句をそのまま書くのではなく、要点だけを抜き出して書いています。メリットやデメリットの名前であるラベルはそのまま書き取ると便利ですが、相手の説明などは要約して書いてしまって構いません。
ディベートでは、後で説明するように、議論の根拠として証拠資料を引用します。そこで、引用された部分については、スピーチの中で区別して記録する必要があります。資料の出典(いつ誰が書いた資料か、といったこと)を記録した上で、図の中で書いているように括弧をつけたり、四角く括ったりして資料の中身とディベーターの主張を区別するようにしてください。
フローシートは最初のうちはなかなか書きなれないかもしれませんが、少し練習すれば誰でも記録できるようになります。もし機会があれば他のディベーターにどのようにフローシートを書いているかを見せてもらうなどするとよいでしょう。
議論の略語
右上の図を見れば分かるように、フローシートでは、記録を楽にするように、よく使う言葉については略語を用いたりします。これについても特に決まりはないのでディベーターがそれぞれ自由に作ってもらって構わないのですが、よく使われる略語について少し紹介しておきます。
*語句の意味については、後で紹介するものもありますので、意味が分からなくても大丈夫です。
AD | メリット(Advantageの略) | DA | デメリット(Disadvantageの略) |
Inh | 内因性(Inherencyの略) | Sig | 重要性(Significanceの略) |
Sol | 解決性(Solvencyの略) | UQ | 固有性(Uniquenessの略) |
Imp | 深刻性(Impactの略) | P | プラン(Planの略) |
T/A | ターンアラウンド | N/Inh | 内因性がない(No Inherency) |
N/P | 証明なし(No proof) | × | 「失敗」「ない」などネガティブな意味 |
↑ | 「上昇」「増加」など | ↓ | 「下降」「減少」など |
次の章からは、ディベートで実際に展開される議論の考え方を説明していきます。ディベートを行う上で、また普段の生活でディベートを生かす上で最も重要なポイントが続きますので、しっかり理解されるようにしてください。