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4.4 証拠資料集の作成

証拠資料が試合で果たす役割

この節では証拠資料集の作り方を説明しますが、その前に「どうしてディベートでは証拠資料が必要になるのか」といった点を説明しておきます。

証拠資料とは、自分たちの主張を裏付けるために用いるデータや見解のことを指します。
ディベートでは専門的なテーマを扱うことがありますが、このような場合、常識的な論理だけでは説明できないことがいろいろ出てきます。また、専門的でない話題でも、説得的に議論するためには、客観的な根拠付けが求められます。このような要求を満たすため、統計データや専門家の見解など客観的な根拠付けを援用する必要がありますが、ディベートではこれを文献・データの引用という形で行います。このとき引用されるのが証拠資料です。

証拠資料集とは何か

リサーチで調べた内容を上で述べたような形で試合に反映させるためには、その内容を試合中に引用しなければなりません。そのためには、引用したい部分を事前にまとめておき、必要に応じて参照できる形にしておく必要があります。

このために作っておく必要があるのが、証拠資料集です。証拠資料集とは、読んだ資料のうち試合で使えそうな部分を抜き出して整理したものです。後の章では議論を実際に構築する方法を説明していきますが、そこでも証拠資料集の作成を前提としています。
証拠資料集が充実していればいるほど、幅広い論点について説得的な議論が展開できます。この節では、そのような議論を可能にするための効率的な資料集を作る方法を解説します。

証拠資料集に載せなければならないこと

証拠資料集に資料を抜き出してまとめる際、絶対載せなければならないのは、その資料の出典です。
資料集の内容は試合で引用するためのものですが、試合で資料を引用する際には、その出典を示さなければなりません。また、試合で読んだ資料は場合によっては後でその内容を検証する必要もあります。このときには、その資料について詳しい出典が必要となります。ですから、資料集については、以下のような出典を明記しておく必要があります。


資料の種類載せるべき出典部分
書籍 著者の肩書き(編著の場合編者と該当部分の筆者。名前についても同じ)
著者の名前
書名・発行年
引用部分の掲載ページ
雑誌記事 著者の肩書き
著者の名前
引用記事のタイトル
掲載雑誌名・巻号・発行年
引用部分の掲載ページ
インターネット上の情報 筆者の肩書き
筆者の名前
サイト名
情報掲載日付あるいはサイトにアクセスした日付
引用サイトのアドレス

これは証拠資料集として最低限必要な要件ですが、その他資料管理を便利にするため、番号をつけたり、資料の内容を要約した見出しをつけると良いでしょう。また、難読文字(特に人の名前)にはルビをふっておくのがよいです。
これらを満たした証拠資料集の例は、以下のようなものになります。

*以下の資料は管理人が出場した大会で使用した資料から一部選んできたものです

[001]遺伝カウンセリングをもってしても、胎児は選択権がないし、夫婦の選択肢も限られている
『ヒトゲノム解析計画と法』 2003年 國學院大學法学部教授 保木本一郎(ほきもと・いちろう) p247
「遺伝カウンセリング(genetic counseling)は、夫婦が生むか生まないかの生殖判断と決定をする場合に大きな手助けにはなるが、受胎後の受精卵や胎児の遺伝子検査をしても、胎児自身は、遺伝的サイコロ(genetic dice)を振るチャンスをすでに失ってしまっているのである。このような場合には、妊娠している胎児を抱えた夫婦が、この時点でなしうる(治療的)選択というのは、通常は子どもの出生を望むにもかかわらず、中絶をするかしないかのいずれかになるのである。」

[002]不妊治療のためでない代理出産の可能性がある
「生命誕生をめぐるバイオエシックス:代理母(1)――女性のオプションの拡大か、女性の搾取か」 1997年 『時の法令』 1539号 p65
津田塾大学教授=法女性学 金城清子(きんじょう・きよこ)
「代理母についての議論や利用は、アメリカでも現在のところ不妊治療としてのものに限られているようである。しかし、代理母の利用はそれだけにとどまるのだろうか。まだ体外受精も現実化していなかった1971年に、ルック誌は、つぎのような生殖技術利用の未来図を描いている。『子どもを産むことには何の問題もない健康な女性が、妊娠・出産のためとはいえ、現在の仕事を中断したり、長期間休暇をとることは望まないとする。それでも自分の子どもが欲しいという場合には、自分の卵と夫の精子とを試験管の中で受精させ、代理母に依頼してその受精卵で妊娠・出産してもらって自分の子どもとして育てる』」

[003]医師が個人の価値観などを反映させて不妊治療をしている
高知県医師会HP 2001年 高知県医師会常任理事 浜脇弘暉 「生殖医療に対する期待と不安」
http://www.kochi.med.or.jp/opinion/sei-6.htm#label5
「現明治学院大学助教授拓植あずみ氏が、不妊治療を行っている産婦人科医35人にインタビュ−し、生殖補助医療を「個人・産婦人科医として容認」の医師は2人に過ぎず、「医師として体外受精や配偶子の提供、代理母などは認めるが、個人としては受け入れられない」が最も多く、「医師としては認めるが、個人的には非配偶者間の人工受精は受け入れられない」は40代以前の若い層に多く、「医師・個人としても配偶者以外の卵子や精子が関わる技術は認めない、反対する技術は希望されても行わない、他人による実施は裁量権として認める」というパタ−ン、「医師・個人としても認めず行わない」というパタ−ンの5つに分類され、医師と個人の立場を使い分けている積もりのようだが、医師の立場に個人の価値観や信条が反映されていることに無自覚なケ−スが多いと分析しています。」

効率の良い資料集作り

以上のようにして読んだ資料の中から有用そうな部分を記録していくわけですが、後の作業や試合で使用する際に便利な工夫として、資料を項目別に整理することが有効です。

一般的には、その論題の争点ごとに項目を設け、資料の内容から該当する部分にその資料を整理していく…といった方法が取られます。
例えば、死刑廃止であれば大項目として「1.死刑の残虐性」「2.死刑と冤罪」「3.死刑の犯罪抑止力」「4.被害者遺族の報復感情」などを設け、その下にそれぞれの大項目ごとの小論点として「1.1 死刑執行の方法」「1.2 拘禁ノイローゼ(精神的苦痛)」「1.3 収監された死刑囚の様子」「1.4 法的問題点」など細かい小項目を設け、ここに内容ごとに当てはまる資料を記録していくことが考えられます。

また、肯定側と否定側で資料集を分けるということもよく行われます。上の目次による分類と肯定側と否定側での分類を組み合わせてもよ8いでしょう。もっとも、どちら側の資料か明らかでない資料もありますし、使い方によっていずれにも分類されうるという場合もあるので、その際には工夫が必要でしょう(肯定側と否定側で資料見出しの色を分けるだけにして資料集は統一させるなど)。


次の章からは、ここまでの説明を前提にして、実際に議論を構築していく方法を説明します。

5.1 議論作りの下準備

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