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5.1 議論作りの下準備 〜ブレインストーミング〜

ここでは、どのような議論を作るかという着想を得るための作業方法を説明します。どのような議論がありうるか、その中でどれが説得的か…を検討するための大切なステップですから、一度実践してみてください。

ブレインストーミングの方法と原則

ブレインストーミングとは、与えられた論題について自由にアイデアを出し、新しい議論の発想を生み出す行為を指します。具体的には、参加者で論題について思ったことや人の発言を聞いて思いついたことなどを自由に発言してもらい、それを記録していく作業です。
例えば、「日本は死刑を廃止すべきである」という論題については、「死刑にはなりたくない」「死刑でも仕方ないような犯罪がある」「死刑囚を閉じ込めておくのにはお金がかかる」「死刑を執行する人はストレスがたまりそう」「自殺できない人は死刑で殺してもらえる」などの発想が生じうるでしょう。こうしたものを全て記録していき、その後まとめて検討していくのです。

ブレインストーミングで守るべき原則として、3つを挙げることができます。
第一に、とにかく自由に発想することです。どんな些細なことでも、ほとんど論題に関係ないと思ったことでも、思ったことはどんどん発言していきましょう。みんなが「当然」と思う内容はそれほど価値がないわけで、新しいこと、なかなか思いつかないようなことにこそ貴重なヒントがあります。既成概念に縛られず自由に考えましょう。
第二に、人の意見に批判を出さないことです。ブレインストーミングの目的はアイデアを出すことであって、そのアイデアを吟味することではありません。批判が出てくると、自由な発想が妨げられ、アイデアが出てこなくなってしまいます。記録する際も、よさそうなものだけでなく、出たアイデア全てを記録するようにしてください。
第三に、上二つと関連しますが、ここではとにかく量を重視するということです。アイデアをできるだけ数多く出すことを目的に、アイデアが出ない場合は少々無理をしてでも発言しようとしてみてください。

ブレインストーミングのヒント

ブレインストーミングで役立つ発想のヒントについて少し挙げておきます。
まず、アイデアは何もないところからいきなり生まれてくるものではなく、既に出たアイデアや知っていることから関連して出てくるということを押さえておきましょう。つまり、自分の思っていることや、人が発言した内容を助けにすることで、思いもよらないアイデアが出ることがあります。基本は「連想」だということです。

そのほかにも、論題に関係ある事実から、その原因や結果を考えてみるという発想がありうるところです。これは、ディベートでもメリット・デメリットを論じる際に重要な要素ですね。
ある事例や考え方について、その極端な例を考えたり、それが当てはまらない例を考えてみるなど、物事を拡大・縮小させて考えることもできます。その例の逆を探したり、逆の理屈が成り立たないか…という思考方法もあります。これは応用として、「〜とは何か」という問いに答えるために「〜でないものは何か」という形でアプローチする…という方法論にもなります。また、ある議論を部分ごとに分けて考えたり、そうやって分けたものを組みかえて考えることもできます。

これは発想方法についてのヒントですが、ブレインストーミングの形式として、発想のために事前に論題について調べておくとか、文献を用意しておくという工夫もありうるところです。あまり知識を入れすぎると発想が固まってしまいよくないのですが、アイデアを出すために最低限必要な知識というものもありますし、知っていることから生まれてくるアイデアもあります。
応用的方法として考えられるのは、担当者ごとに論題に関係したテーマを割り振り、それぞれが自分の担当部分について発表した後でブレインストーミングをやるというものです。この場合、担当者の固定観念をその他のメンバーの発言でフォローできますし、テーマを横断した発想が出やすいと考えられます。また、論題の重要分野について担当者ができ、その後の作業にも資するでしょう。

出たアイデアをまとめる

ブレインストーミングで出たアイデアは、それぞれのアイデアごとにカード(紙切れや付箋でもよい)に書き込んでおくとよいです。というのは、アイデアは出しっぱなしにするのではなく、関連するものと組み合わせてまとめることで役立つからです。

カードごとに書き込んだアイデアは、内容として関連するもの同士分けておきます。それから、それらのまとまったアイデア群を一かたまりで考え、さらに関連するもの(近いもの)同士近いところに置いてみます。すると、論題についてのアイデアが地図のようになって現れてくるはずです。それを眺めながら、ありうるメリットやデメリットについて想像してみたり、新しいアイデアを考えてみたりするとよいでしょう。
この段階であれば、ある程度批評的なコメントをすることもありでしょう。どのアイデアが説得的であるかという検討の作業に入ってきているからです。もっとも、ブレインストーミングで出てきた内容を否定するようなコメントはダメです。


ここで出たアイデアを元に、いよいよ立論を考えていくことになります。次の節では、立論を考えるに当たって新しく必要とされる要素をいくつか説明した上で、議論の構築から原稿化の方法までを説明していきます。

≫5.2 立論原稿の作り方

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