初心者のディベーターを救う団・公式ホームページ

2.4 スピーチのルール

ディベートの試合では、公平に議論を行うためのルールがあります。少しだけややこしい部分もありますが、ディベートでは大切な部分ですから、きちんと押さえておく必要があります。

ニューアーギュメント

ディベートでは、立論の間に全ての投票理由(論題を肯定/否定する理由)を出さなければなりません。後のほうでいきなり別の理由が出てきても、それは判定の中で考慮されないのです。この「立論より後で出された投票理由」のことをニューアーギュメントと呼びます。 日本語で言えば「新出議論」です。
具体的には、第3章で説明するメリットやデメリットを反駁のステージで提出することなどがニューアーギュメントに当たります。

ニューアーギュメントに当たる議論は当然に無効とされ、試合の中で指摘がなかったとしても、ジャッジの判断で判定材料から除外されます(反則として試合に負ける理由となるわけではありません)。
ニューアーギュメントが判定に含まれないとされる理由は、2つあります。第一に、反論を行う機会を保障するためです。試合を左右する投票理由が最後のほうでいきなり出てきてしまうと、相手側がそれについて反論できないまま試合が終わってしまいます。そのような議論で勝敗が決まってしまうことは不公平です。ですから、ディベートでは投票理由について反論する機会を保障し、議論が深まるように、立論の段階で全ての投票理由が出てくるよう規定しているのです。第二に、議論がきちんとぶつかり合うように促すことで教育的効果を高めるためです。早いうちに主張を出させることで、反論を行いやすくし、議論が深まるようになります。後のほうで重要な議論が出てきてしまうと、その議論について議論が深まらないため、望ましくないのです。

ここで、立論の段階で主張されなければならない「投票理由」とは一体何を指すのかが問題となります。基本的には、相手の議論を否定する反駁についても投票理由として考慮するのですが(ですから、反駁のステージでは立論までに出されたメリット・デメリットやそれに対する反論についてのみスピーチし、それらの議論を比較したり分析を深めたりすることがその役割となります)、1回しか立論がない場合、それだと第一反駁の仕事がなくなってしまいます。そのため、1回しかない立論の形式をとるルール(中高生が取り組むディベート甲子園など)では、ニューアーギュメントはメリット・デメリットに適用されるものとして考え、その他の反論については以下に説明するレイトレスポンスの概念で規制を設けています。

レイトレスポンス

レイトレスポンス(遅すぎる反駁)とは、もっと早くの段階で反論できたのに後のステージで行われた反論のことです。具体的には、肯定側立論に対して否定側第二反駁で加えられた反論や否定側第一反駁の議論に対して肯定側第二反駁でなした再反論がこれに当たります(前者の例では否定側第一反駁で、後者の例では肯定側第一反駁で反論できたはずです)。
ニューアーギュメントと同様、レイトレスポンスとされた議論は当然に無効とされ、ジャッジの判断で判定材料から除外されます。

レイトレスポンスが無効とされる理由も、ニューアーギュメントと同じく、反論の機会を保障することと教育的配慮にあります。相手側が反論を行う機会を保障するということは、議論一般に言えるマナーです。言いっぱなしの議論は他人からのチェックを受けることがないため、信用性にかけますし、そうした議論で相手側に不利益を生じさせることは公正とはいえません。また、早い段階で反論が出されない場合、その論点について十分に議論されない可能性があります。ですから、ディベートにおいても遅すぎる反論は評価の対象とせず、反論の機会を確保するように定めているのです。
このように考える結果として、相手側に対して反論ができたにもかかわらずそれを行わなかった場合は、その議論について反論を放棄したものとみなされることになります。ただし、2回立論がある場合、1回目の立論で反論を行わなかったとしても、2回目の立論で新たに反論を加えることは自由です。

コラム 〜ニューアーギュメントにならないスピーチ〜
2.2節で、第二反駁は試合を総括する役割であるということを説明しました。ここで、総括において自分たちが触れなかった議論に言及することが、ニューアーギュメントやレイトレスポンスに当たるのではないかという疑問が生じうるところです。実際、そのように主張するディベーターも散見されるところです。

結論からすると、そのようなことはありません。上述の通り、ニューアーギュメントやレイトレスポンスが無効とされる趣旨は、相手側の反論機会を保障することや議論の衝突を促すことにあり、相手側の議論を保護することではありません。つまり、相手側に反論機会を生ぜしめるようなスピーチでない場合は、無効とする必要はありません。

では、相手側に反論機会を生ぜしめるスピーチとは何でしょうか。それは、根拠を付して相手側の議論を攻撃するようなスピーチです。自分たちとは異なる根拠が伴う議論が出されれば、相手側としてもその根拠を否定する実益があります。しかし、単に相手側の立証の不備を指摘するだけの反論であれば、それに対して反論を行うことは「根拠の追加」となりますから、それ自体がニューアーギュメントないしレイトレスポンスに当たるわけで、そのような反論は認められません。

よって、第二反駁で相手側の議論に言及し、どの程度の立証がなされているのかを評価する作業については、ニューアーギュメントやレイトレスポンスには当たらないというべきです。もっとも、議論を明確にするため、そのような指摘についても早い段階でなされることが望ましいのは当然です。

2.5 反則行為

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