初心者のディベーターを救う団・公式ホームページ

4.1 リサーチの目的

いよいよ、議論を実際に作る作業についての説明に入ります。
その前に、議論作りの前提として、議論を作る材料の集め方を説明します。どんなに優れた人でも、新しいテーマについていきなり素晴らしい議論を作るということはできません。素晴らしい議論を作るには、そのための準備が大切なのです。

リサーチとは何か

ディベートでは、普段は考えないような難しいテーマを扱います。参考までに日本ディベート協会(JDA)の策定した論題や、中高生の取り組むディベート甲子園で使用される論題からいくつか紹介すると、以下のようなものがあります。

「日本は選挙の棄権に罰則を設けるべし。是か非か」(1997年ディベート甲子園中学論題)
「日本は積極的安楽死を法的に認めるべきである。是か非か」(1998年,2003年ディベート甲子園高校論題)
「日本政府は、刑事裁判において証拠として認められる範囲を拡大すべきである。」(JDA1998年前期推薦論題)
「日本は、首相公選制度又は国民投票制度の導入により、国民の国政への直接的な参加を可能にすべきである。」(1999年JDA後期推薦論題)
「日本国政府は、人クローン胚の作成および人体への応用に関する規制を大幅に緩和すべきである。」(2002年JDA後期推薦論題)
「日本・中国・韓国および全ASEAN加盟国は、自国通貨を廃止し、共通通貨を採用すべきである。」(2004年JDA前期推薦論題)
「日本政府は、弾道ミサイル防衛システムの導入及び開発を一切放棄すべきである。」(2006年JDA前期推薦論題)

以上のようなテーマについて、思いつきで議論ができるはずはありません。そのため、ディベートでは論題発表から大会まで長い準備期間(1ヶ月〜)が与えられ、選手はその間に論題について調べることになります。これをリサーチといいます。リサーチをしっかり行うことで、上記のような難しいテーマについても充実した議論を行うことができます。

ここでは、このようなリサーチの目的について、詳しく見ていくことにします。「論題について調べるため」というような漠然とした理解では、充実したリサーチは行えません。議論を作るということとリサーチがどのように関係していくのかを意識することではじめて、効率の良いリサーチが可能となるのです。

リサーチの2つの目的

リサーチの目的は、大きく分けて2つあります。それぞれの目的によって、資料の読み方や作業の方法が若干異なってくるので、このことを意識することは大切です。

第一の目的は、論題についての基礎知識を得ることです。議論を考える上でも、試合で展開される議論を理解するうえでも、論題についての知識は欠かせません。そのため、まずは選手が論題に詳しくならなければなりません。また、下で説明する「材料集め」のためにも、基本的な知識を持っていなければなりません。その論題で重要な論点は何かを知るためにも、基礎知識が求められるのです。
この目的のためには、『日本の論点』のような本や新書など、比較的易しい内容でテーマ全体について解説しているような本を読むことが効果的です。また、本を読む際にも、しっかり理解できるよう、それなりに時間をかけて読む必要があります。

第二の目的は、議論を組み立てる材料として証拠資料を集めることです。詳しくは本章4節で説明しますが、ディベートでは専門的内容の主張に伴わせる根拠として、客観的な説得力を有する資料を引用することが求められます。自分たちの主張を裏付けてくれる強力な証拠資料を集めることは、ディベートで勝つために非常に重要です。
この目的のためには、専門的な内容に踏み込んで、深いリサーチを行う必要があります。また、論題そのものだけではなく、必要に応じて関連分野についても調べ、多角的な視点から裏付けとなる内容を見つけなければなりません。そのため、この作業はどちらかというと量を重視し、使えそうな内容にできるだけ多くあたり、そこから使える内容を探し出すという形になります。また、必要に応じて範囲を絞り、自分のほしい内容について深く調べるなどのリサーチ戦略も要求されます。

この章では、以上のような目的を達成するための手段として、主要なリサーチ方法について説明します。その上で、集めた証拠資料をどのように処理するのかということについても、いくつかのヒントを紹介していきます。

4.2 資料の集め方

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